『生頼範義展』感想

 生頼氏の住むという宮崎市で何度か展覧会が開催されるたび、「観たいけど、遠いから行けないなぁ」と羨ましく思っていた。今回、待望の本州での開催となり、上京できる機会に観に行った。

 まず驚かされたのは、絵の具の発色の鮮やかさ。アナログの絵画だけど、まるで宝石のように絵が発光している印象を受けた。『スターウォーズ』のエメラルドグリーンの宇宙空間や、『ウルトラマンパワード』の怪獣のサファイア色の肌、その息を呑む美しさは、印刷物の印象とはまるで違った。そういう点では、画集で見て想像していたよりも寸法も大きかった。ポスター用の絵はもちろん、『SFアドベンチャー』の表紙用の絵も巨大で迫力があった(この表紙のコーナーでは、『フランチェスカ・ダ・リミニ』が気に入った)。

 そして、1枚1枚の絵の密度が高く、情報量の多さも凄い。絵の元となった小説や映画の登場人物を詰め込んでいるせいもあるだろうけど、人体や歴史を感じさせる衣服、装身具や戦艦、海面の波といった、この世に実在するものを観察して得た情報がたくさん盛り込まれているから、絵に厚みがあるのだろう。空想上の宇宙船の格好よさも、実在した戦艦を巧く描く技術や知識が背景にあればこそなのだろうと感じた。『アキラメカニクス』の「SOL」の絵は、画集で見た時はなんとも思わなかったけど、実物を見たら金属の質感のあまりの格好よさに見入った。

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 情報量という点では、1つの絵の中に縮尺の違うものを並べているところも面白いと思った。『銀河パトロール隊』のように一目瞭然でいろんな縮尺のものが並ぶ絵もあれば、じっくり見て気づいた絵もあった。『戦艦「大和」図面集』では、戦艦の間近を戦闘機が飛んでいるのだけど、パイロットの大きさを基準にして戦艦を眺めると、戦艦が若干小さいように見える。リアルな対比ではなく、戦闘機を見ごたえのある大きさに微妙に誇張して描いたのではないか。

 あとは、宇宙空間と古代の彫刻や絵画を並べるような、何と何を組み合わせるか、そこからどのような印象が生まれるかという、配置の妙も面白かった。

 美術館から出る頃には、「こんなに凄い絵をたくさん描いた人が世の中に居る一方で、あまり生産的でない自分の人生ってなんなんだろう……」と考えさせられる展示だった。

(2018年1月28日@上野の森美術館)

C93(冬コミ)参加報告と買った本

当日の様子

 自分が編集した水池屋さんの同人誌を売るために参加。サークルが配置された場所は、アニメスタイルの正社員になったというunkoerさんのサークル「アニメ偏報」と、『月刊アニメスタイル』時代に一緒にアルバイトをした、やしさんのサークル「NANL」に挟まれていて、アニメスタイル色の濃い一角だなと思いました。

 開始30分間だけ買い物に出かけて、後はずっと自分のスペースで売り子をしていました。冬なので寒さが厳しかったですね。新しいもの好きなので、pixivPayにも対応してみましたが、利用者は0人でした。

 文章の本なので需要が読めなかったけど、蓋を開けてみれば次回に続きが出せるぐらいの冊数は売れたので、良かったです! また差し入れなど下さった方、ありがとうございました。

買った本

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・まつもとあつし『アニメ・マナビ アニメと配信の現在と未来 〜Netflixはアニメビジネスの救世主か?〜』

ジャーナリストのまつもとあつし氏と西田宗千佳氏の対談本。『ボルトロン』や『Overwatch』といった日本風のコンテンツが日本抜きで海外で作られている状況を西田氏が危惧する発言があって、僕も同じことを(特に中国のWOLF SMOKE STUDIOが『Overwatch』のアニメPVを作った時に)感じていたので、うなずきながら読んだ。それに続く文で、1990年代には日本にPCメーカーがたくさんあったのに、今も同じ体勢で続いているところは、ほぼパナソニックしかない。現在たくさんある日本のアニメスタジオがそれと同じ歴史を繰り返す可能性があるという予測は、そんな未来が容易に想像できてしまって、ゾッとした。

・氷川竜介『アニメ怪獣SF青春記 1974年の大変革と怪獣倶楽部の誕生』

昨年TVドラマの題材にもなった伝説的同人サークル「怪獣倶楽部」の当時の様子や、氷川さんの学生時代・アマチュア時代を記した自伝。怪獣倶楽部の発足は大伴昌司氏の急逝が影響しているのではないかという考え方など、なるほどと思わされた。オタク向けメディアの開拓時代の話なので、読んでいて面白かったですね。

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・山門郁夫『ネト充のOP・EDのススメ方~ネト充にもススメる原画・コンテ集』

タイトルロゴのアニメーションが印象に残っていたのだけど、解説を読んで山門氏の持ち味だと分かりました。

・unkoer、芯入り、東京都、ムトベ『ごうがいアニメ偏報Max Heart』

原画集レビュー連載で水池屋さんが病気で1回だけ休んだ時に、芯入りさんに代理原稿をお願いしたのだけど、その原稿が収録されている関係で、表紙が水池屋さんの同人誌のパロディになっていました。タイムシートの「全何枚中の何枚目」を記入する欄が各社でどのように違うかを検証する記事が面白かったです。

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・おもちまみれ『おもちかしら??』

『Just Because!』第1話、第7話、第11話のレイアウトが掲載されていました。

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・すな(近岡直)『ふゆぼん』

水彩や油絵で描かれたアニメキャラのカラーイラスト集。絵が凄くかわいい。
デフォルメされた絵柄も好きなので、マグカップも買いました。

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・五十嵐海『ぐわ/ぺ/えん』

トリガーのアニメーター・五十嵐海氏のペン画、鉛筆画のイラスト集。
同人誌と一緒に買った御札ステッカーは、格好いいので、MacBookの天板に貼りました。御札というアイデアも良いですね。

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・若林信『若林信仕事集2』

『エロマンガ先生』第8話の絵コンテ集。絵コンテに吹き出しを被せて解説コメントが記されている。吹き出しが半透明なので、絵コンテの内容もちゃんと見ることができる。これは面白い作りの絵コンテ集だなと思いました。

多魔『COMI DASH 業界クリエイター取材集 No.01』

中国の同人誌即売会「comiday 成都同人祭」代表の多魔氏の同人誌。同即売会のパンフレットに掲載された、アニメーター・榎戸駿氏のインタビューなどを収録。中国のかたなので、ところどころ日本語がたどたどしいけど、アニメに造詣が深く、アニメーターにこんなに深く質問できるインタビュアーは珍しいのではないかと驚かされた。

C93(冬コミ)参加情報

2017年12月31日(日)東6ホール:ト44b
サークル名:bono1978
https://webcatalog-free.circle.ms/Circle/13606075 

頒布物『水池屋文庫』
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内容
・「アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ」に連載された「理想のアニメ原画集を求めて」から、原画集レビュー20本を収録。
・特別インタビュー「アニメの行方」……アニメの製作委員会に関係している会社員の方とアニメ制作会社のプロデューサーのインタビュー。
・書き下ろしコラム「アニメ教則本の世界」……近年増加傾向にある、アニメに関する教則本(描き方本)を紹介します。


同人誌『水池屋文庫 MIZUIKEYA LIBRARY No.01』内容紹介

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『澁澤龍彦 ドラコニアの地平展』感想

 初めて読んだ澁澤龍彦の本は『黒魔術の手帳』だったと思う。僕はそれほど熱心な読者ではないが、西洋の不思議な文化の紹介者であり、独自の美意識で集められた奇妙な美術品やオブジェに囲まれて暮らした澁澤龍彦は、昔からとても気になる人物だ。彼にまつわる不思議な写真がたくさん載っている『澁澤龍彦事典』を眺めるのが好きなので、そんなコレクションを期待して観に行った。

 思えば、作家の回顧展を見たのは初めてで、まず生原稿の量に圧倒された。中には、澁澤自身が描いた、書籍の装丁のラフスケッチなどもあった。作家になる前に編集者を経験していたことも今回初めて知った。

 どうしても注目してしまうのは、イタリア関係の展示。ティボリのエステ荘の画や、ボマルツォの怪物公園の写真、ナポリ考古学博物館のカッリピージャのヴィーナスの模刻は、僕も現地で実物を観たので、時間を超えて「同じものを見たんだな」と特別な感情がわいた。

 じっくりと眺めたのは、「聖澁澤龍彦の誘惑」等の池田満寿夫氏のコラージュ作品。非常に格好よかった。

 あと、南方熊楠の「菌類図譜」のコーナーで、正式に発表されなかったため新種の菌類と認められていない、というような解説を読んで「そうだったのか……」と印象に残った。

 他にも、廃墟のような模様の石、四谷シモンの人形、綺麗な貝殻、奇妙な絵柄のトランプ、今では考えられないようなデザインの格好いい昔の書籍など、刺激的な品々でいっぱいだった。

(2017年11月26日@世田谷文学館)