『澁澤龍彦 ドラコニアの地平展』感想

 初めて読んだ澁澤龍彦の本は『黒魔術の手帳』だったと思う。僕はそれほど熱心な読者ではないが、西洋の不思議な文化の紹介者であり、独自の美意識で集められた奇妙な美術品やオブジェに囲まれて暮らした澁澤龍彦は、昔からとても気になる人物だ。彼にまつわる不思議な写真がたくさん載っている『澁澤龍彦事典』を眺めるのが好きなので、そんなコレクションを期待して観に行った。

 思えば、作家の回顧展を見たのは初めてで、まず生原稿の量に圧倒された。中には、澁澤自身が描いた、書籍の装丁のラフスケッチなどもあった。作家になる前に編集者を経験していたことも今回初めて知った。

 どうしても注目してしまうのは、イタリア関係の展示。ティボリのエステ荘の画や、ボマルツォの怪物公園の写真、ナポリ考古学博物館のカッリピージャのヴィーナスの模刻は、僕も現地で実物を観たので、時間を超えて「同じものを見たんだな」と特別な感情がわいた。

 じっくりと眺めたのは、「聖澁澤龍彦の誘惑」等の池田満寿夫氏のコラージュ作品。非常に格好よかった。

 あと、南方熊楠の「菌類図譜」のコーナーで、正式に発表されなかったため新種の菌類と認められていない、というような解説を読んで「そうだったのか……」と印象に残った。

 他にも、廃墟のような模様の石、四谷シモンの人形、綺麗な貝殻、奇妙な絵柄のトランプ、今では考えられないようなデザインの格好いい昔の書籍など、刺激的な品々でいっぱいだった。

(2017年11月26日@世田谷文学館)